エリート外科医との政略結婚は、離婚予定につき~この愛に溺れるわけにはいきません~
それどころか売り上げも利益も右肩上がりで経営の上での懸念材料などなにもないのだ。そんな中で父がこれまでの信念を変えてまで特定の病院との関係強化を進めようとしているとは信じられない。
「たしかに宗崎病院の名前は知ってるし、うちの会社と関係があるのもわかるけどお見合いなんて考えてなかったし……」
まとまらない感情を整理しながら、珠希はため息を吐く。
視線を戻すと、タブレットの画面には宗崎の端正な顔。
見るたびそわそわ落ち着かない。
珠希は手元の湯飲みを手に取り、とっくに冷めているお茶を飲み干した。
「拓真もこのお話に乗り気なのよ」
それまで父と珠希のやりとりを眺めていた母が、おもむろに口を開いた。
「お兄ちゃん? あ、もしかしてこのお見合いのことで今日来てたの?」
珠希はテーブルの上の豚の角煮に視線を向ける。
珠希の予想どおり拓真は今日仕事帰りに顔を出したらしく、午前中に拓真から連絡を受けた母は急いで角煮を作ったそうだ。
平日に拓真がどうして来たのか気になっていたが、見合いの話に驚いてすっかり忘れていた。
「拓真は宗崎病院の担当で、碧さんと顔を合わせたこともあってね。とても優秀なドクターだし是非ともこのお話を進めろって言ってたわ」
母は身を乗り出しにっこり笑う。
「珠希を猫かわいがりしている拓真も納得の立派な男性のようだし、いいんじゃない? お見合いしてみたら?」
「してみたらって……他人事みたいに」
母は珠希が拓真に弱いのを知っていて、わざと言っているのだろう。
だとすれば、この見合いをどうしても進めたい理由があるのかもしれない。
「笠原先生のもとで働いているってだけでも、優秀なドクターだってわかるわよね」
「それは、わかるけど……」
母の更なる後押しに、珠希は見合いに向けてじわじわと外堀を埋められているような気がした。
こうなると見合いをしないわけにはいかないだろう。
「たしかに宗崎病院の名前は知ってるし、うちの会社と関係があるのもわかるけどお見合いなんて考えてなかったし……」
まとまらない感情を整理しながら、珠希はため息を吐く。
視線を戻すと、タブレットの画面には宗崎の端正な顔。
見るたびそわそわ落ち着かない。
珠希は手元の湯飲みを手に取り、とっくに冷めているお茶を飲み干した。
「拓真もこのお話に乗り気なのよ」
それまで父と珠希のやりとりを眺めていた母が、おもむろに口を開いた。
「お兄ちゃん? あ、もしかしてこのお見合いのことで今日来てたの?」
珠希はテーブルの上の豚の角煮に視線を向ける。
珠希の予想どおり拓真は今日仕事帰りに顔を出したらしく、午前中に拓真から連絡を受けた母は急いで角煮を作ったそうだ。
平日に拓真がどうして来たのか気になっていたが、見合いの話に驚いてすっかり忘れていた。
「拓真は宗崎病院の担当で、碧さんと顔を合わせたこともあってね。とても優秀なドクターだし是非ともこのお話を進めろって言ってたわ」
母は身を乗り出しにっこり笑う。
「珠希を猫かわいがりしている拓真も納得の立派な男性のようだし、いいんじゃない? お見合いしてみたら?」
「してみたらって……他人事みたいに」
母は珠希が拓真に弱いのを知っていて、わざと言っているのだろう。
だとすれば、この見合いをどうしても進めたい理由があるのかもしれない。
「笠原先生のもとで働いているってだけでも、優秀なドクターだってわかるわよね」
「それは、わかるけど……」
母の更なる後押しに、珠希は見合いに向けてじわじわと外堀を埋められているような気がした。
こうなると見合いをしないわけにはいかないだろう。