エリート外科医との政略結婚は、離婚予定につき~この愛に溺れるわけにはいきません~
それにしても、珠希の意思を完全に無視して話を進めるやり方は、普段の父や母、そして拓真からは考えられない。
家業をないがしろにできないながらも、珠希の意志や幸せをなにより大切に考えてくれているのだ。
なのに今、珠希の意思は置き去りにされたままだ。どう考えてもおかしい。
珠希はタブレットの画面に浮かんでいる拓真の整った顔を見ながら、重い息を吐き出した。
自室に戻った珠希はラグの上に腰を下ろし、ローテ―ブルに置いているパソコンの電源を入れた。
唐突に持ち上がった見合いへの疑問や不安は、好物の角煮を堪能し湯船に浸かってリラクスできたせいか、今はひとまず落ち着いている。
すべての見合いが結婚に直結するわけではないと気づいて気が楽になったからだ。
宗崎のように見た目抜群の医師なら見合いなどしなくても結婚相手には困らないはずで、今も将来を考えている恋人がいる可能性が高い。
珠希同様、周囲から強引に見合いを勧められて断りきれず、困っているかもしれない。
一週間ほど前に見た宗崎の端正な顔を思い出し、きっとそうだろうと納得する。
顔だけでなく白衣姿がよく似合うスラリとした体躯。
自分にはもったいないほどの素敵な人だった。
見合いをしたとしても宗崎は結婚などチラリとも考えずに断るはずで、気を揉む必要はないだろう。
湯船の中で思いついて以来、珠希は何度もそう自分に言い聞かせている。
ただ、そのたび胸に走る鈍い痛みがなんなのかよくわからないままだ。
「そういえば……」
珠希は傍らにあるバッグの中から宗崎の連絡先が書かれた名刺を取り出した。
そこには丁寧な文字と数字が並んでいて、あの日手渡されて以来何度も眺めている。
珠希は白石病院のホールで交わした宗崎とのやりとりを思い返した。
その途端、断られるはずの見合いだとわかっていても、再び宗崎と会えるのを楽しみにしている自分に気づく。
家業をないがしろにできないながらも、珠希の意志や幸せをなにより大切に考えてくれているのだ。
なのに今、珠希の意思は置き去りにされたままだ。どう考えてもおかしい。
珠希はタブレットの画面に浮かんでいる拓真の整った顔を見ながら、重い息を吐き出した。
自室に戻った珠希はラグの上に腰を下ろし、ローテ―ブルに置いているパソコンの電源を入れた。
唐突に持ち上がった見合いへの疑問や不安は、好物の角煮を堪能し湯船に浸かってリラクスできたせいか、今はひとまず落ち着いている。
すべての見合いが結婚に直結するわけではないと気づいて気が楽になったからだ。
宗崎のように見た目抜群の医師なら見合いなどしなくても結婚相手には困らないはずで、今も将来を考えている恋人がいる可能性が高い。
珠希同様、周囲から強引に見合いを勧められて断りきれず、困っているかもしれない。
一週間ほど前に見た宗崎の端正な顔を思い出し、きっとそうだろうと納得する。
顔だけでなく白衣姿がよく似合うスラリとした体躯。
自分にはもったいないほどの素敵な人だった。
見合いをしたとしても宗崎は結婚などチラリとも考えずに断るはずで、気を揉む必要はないだろう。
湯船の中で思いついて以来、珠希は何度もそう自分に言い聞かせている。
ただ、そのたび胸に走る鈍い痛みがなんなのかよくわからないままだ。
「そういえば……」
珠希は傍らにあるバッグの中から宗崎の連絡先が書かれた名刺を取り出した。
そこには丁寧な文字と数字が並んでいて、あの日手渡されて以来何度も眺めている。
珠希は白石病院のホールで交わした宗崎とのやりとりを思い返した。
その途端、断られるはずの見合いだとわかっていても、再び宗崎と会えるのを楽しみにしている自分に気づく。