エリート外科医との政略結婚は、離婚予定につき~この愛に溺れるわけにはいきません~
「あ、本当に急がなきゃ。先方を待たせるわけにはいかないし」
珠希の言葉に志紀も必要以上の大きな声で反応する。
「でしたら私が車でお送りしましょうか」
大宮が食い下がってくる。
「いえ、お気づかいはありがたいのですが、電車の方が早いので大丈夫です」
珠希は優しい声音ながらもきっぱりと言う。
「そ、そうですか……」
大宮は肩を落とし、ぼんやりとつぶやいた。
「ごめんね、まさか大宮さんと顔を合わせるとは思わなくて」
珠希は志紀とともに大宮病院の最寄り駅で電車に乗り、ホッと息をついた。
珠希がこれから向かう白石病院はここから八駅先にあり、三十分以上かかる。
もともとは大宮病院で客待ちをしているタクシーで行くつもりだったが、電車で行く方が早いと大宮に言った手前仕方なく電車に切り替えた。
病院を後にするときに大宮が出入り口に立ち、珠希を名残惜しそうに見送っていたのでそうするしかなかったのだ。
「さっきの人、大宮病院の次期院長なんでしょう? かなり珠希を気に入ってたよね」
「私が和合製薬の社長の娘だから声をかけやすいだけだと思う」
あっさりそう言って受け流す珠希を、志紀はやれやれと口もとを緩めた。
「相変わらずだね。恋愛関係になるとほんと鈍すぎ」
「……余計なお世話です」
珠希は眉を寄せ、志紀をわずかに睨む。
ひと言くらい文句を言いたいところだが、恋愛経験ゼロの珠希にはそれ以上なにも言えずもどかしい。
「でも、あの次期院長かなりしつこそうだったから、またなにか言ってきそう。大丈夫?」
声音が変わり、真面目な表情で志紀は珠希を見つめる。
「え?」
「別れ際も珠希に見とれてぽーっとしてた。まあ、珠希のかわいらしい顔を目の前にしたら、私もドキドキしちゃうけどね」
「ドキドキって……今まで彼氏のひとりもいない私を慰めてくれなくても大丈夫」
志紀は軽くため息を吐き、肩をすくめた。
珠希の言葉に志紀も必要以上の大きな声で反応する。
「でしたら私が車でお送りしましょうか」
大宮が食い下がってくる。
「いえ、お気づかいはありがたいのですが、電車の方が早いので大丈夫です」
珠希は優しい声音ながらもきっぱりと言う。
「そ、そうですか……」
大宮は肩を落とし、ぼんやりとつぶやいた。
「ごめんね、まさか大宮さんと顔を合わせるとは思わなくて」
珠希は志紀とともに大宮病院の最寄り駅で電車に乗り、ホッと息をついた。
珠希がこれから向かう白石病院はここから八駅先にあり、三十分以上かかる。
もともとは大宮病院で客待ちをしているタクシーで行くつもりだったが、電車で行く方が早いと大宮に言った手前仕方なく電車に切り替えた。
病院を後にするときに大宮が出入り口に立ち、珠希を名残惜しそうに見送っていたのでそうするしかなかったのだ。
「さっきの人、大宮病院の次期院長なんでしょう? かなり珠希を気に入ってたよね」
「私が和合製薬の社長の娘だから声をかけやすいだけだと思う」
あっさりそう言って受け流す珠希を、志紀はやれやれと口もとを緩めた。
「相変わらずだね。恋愛関係になるとほんと鈍すぎ」
「……余計なお世話です」
珠希は眉を寄せ、志紀をわずかに睨む。
ひと言くらい文句を言いたいところだが、恋愛経験ゼロの珠希にはそれ以上なにも言えずもどかしい。
「でも、あの次期院長かなりしつこそうだったから、またなにか言ってきそう。大丈夫?」
声音が変わり、真面目な表情で志紀は珠希を見つめる。
「え?」
「別れ際も珠希に見とれてぽーっとしてた。まあ、珠希のかわいらしい顔を目の前にしたら、私もドキドキしちゃうけどね」
「ドキドキって……今まで彼氏のひとりもいない私を慰めてくれなくても大丈夫」
志紀は軽くため息を吐き、肩をすくめた。