永遠に踊る
手入れされた木々が美しい庭を抜け、灰治は豪華な装飾が施された美しい舞殿へと連れて行かれる。その舞殿を見た時、灰治は初めて劇場に足を踏み入れた時のことを思い出した。

「素敵でしょう?あたしが大工に頼んで作ってもらったんです。……着替えてきますので、少々お待ちください」

ウズメはそう言い、舞殿の奥にある扉を開けて入っていく。その後ろ姿を灰治はぼんやりと眺めていた。

広々とした舞殿にはすでに楽器が並べられ、演奏者も揃っている。灰治が用意されていた柔らかな座布団に座ると、いつの間に入って来たのか使用人がお茶とお菓子を置いてくれた。

数分ほど時間が経っただろうか。扉が開き、ウズメが姿を見せる。その姿を見た時、灰治は彼女から目を離せなかった。頬が赤く染まり、胸が高鳴っていく。

ウズメは真っ白な水干に紅の袴を履き、黒の立烏帽子を被り、腰には白鞘巻の太刀を差している。その手には桃色の美しい扇が握られていた。平安時代末期から鎌倉時代にかけて流行した白拍子舞の衣装である。
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