永遠に踊る
(素晴らしい芸能がたくさん公演されているって奉公先の家の人たちが話していたから気になって来てみたけど……想像以上だったな……)

公演が終わっても、灰治の中でゾクゾクとした感動は心の奥底から消えない。実家の周りは山や川などしかなく、芸能を見るのが初めてだったため心に深く残ったのだろう。

(母さんたちにもいつか見せてあげたいな)

そう思いながら灰治が劇場を出ようとした時だった。グイッと何者かに袖を引かれる。

「あの、こんにちは」

そこにいたのは、くすみカラーの着物と袴を着た女の子が立っていた。肌は健康的に日焼けをしていて、ピンクがかった二つに結んだ髪はウェーブがかっている。華やかな顔立ちと雰囲気から、一目で灰治は目の前にいる彼女がどこかのご令嬢だと判断した。

「こんにちは。どうかされましたか?」

少し緊張を覚えながらも、灰治は仕事をする時のように顔に笑みを浮かべる。女の子は目を一瞬見開いた後、どこか恥ずかしそうに口元を手で覆った。
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