永遠に踊る

灰治は顔を真っ赤にしながら、頭をかく。他の男性だったならば、隣に座っていた可憐な女性のことを忘れることなどなかっただろう。だが、灰治はそれを忘れてしまうほど舞台に熱中していたのだ。

「うふふ。そんなにあの舞台に集中されていたのですね」

「す、すみません……」

人の顔を忘れてしまうなど、失礼にも程がありすぎる。灰治は今すぐ逃げ出したい衝動に駆られていったものの、女の子が手を掴んできたためそれはできなかった。

「よかったら、そこの喫茶店でお話でもしませんか？」

灰治が口を開く前に女の子に手を引かれ、灰治は劇場の近くにある喫茶店へと連れて行かれ、二時間近く話すことになった。そしてこの出会いが、灰治の運命を狂わせていくのである。



女の子の名前はアマノウズメノミコトと言う。喫茶店で彼女が「長いでしょ？」と笑いながら教えてくれた。灰治は「ウズメ様」と呼ぶことに決めた。

ウズメは芸能が好きらしく、暇があれば劇場などに通っているのだと言う。紅茶を一口飲み、ウズメはニコリと微笑む。