永遠に踊る
灰治はお金を出してもらうことについては当然断っていた。お金をコツコツ貯めてからまた劇場に足を運ぶつもりだったのだが、ウズメに涙で潤んだ瞳で見つめられ、懇願されたのだ。

「お願いです……。一人で見るのは寂しいので、一緒に見てください。終わった後に喫茶店で感想を言い合うのもきっと楽しいですから……」

おまけに、首を縦に振るまでは離さないと言わんばかりに着物の裾を掴まれてしまっては、断るという選択肢を選べなくなってしまう。

「では……お、お言葉に甘えて……」

そう灰治が申し訳なさを感じながらも言うと、ウズメは花が咲いたような笑顔を見せてくれる。

「うふふ。次の公演、楽しみですね!」

「え、ええ……」

女性にお金を出させるなど、多くの男性に馬鹿にされてもおかしくない。だが、二人分のお金は愚か一人分のお金さえ出すことが厳しいため、甘えるしかないのだ。

劇場では、ひと月に一度のペースで公演が行われる。公演が行われる今日、灰治はウズメと共に劇場へと足を運んだ。
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