永遠に踊る
今日劇場で行われたのは、西洋のおとぎ話を劇にしたものだった。西洋のおとぎ話など灰治は一つも聞いたことがないため、初めて見る西洋の物語に胸が弾む。

「ーーーそして、白雪姫は王子様のキスで眠りから目を覚ましたのです」

舞台の隅でナレーターが言うと、王子役が眠っている演技をしている白雪姫役の女性に顔を近付けていく。実際に唇と唇が触れているわけではないだろう。だが、舞台から遠くの席に座っている灰治には、まるで二人が本当に口付けを交わしているかのように見えた。

(こ、これが西洋のおとぎ話……)

顔が一瞬にして赤く染まっていく。西洋のおとぎ話は日本のものとは違い、男女の恋愛描写が強く描かれている。刺激が強く、灰治はチラリと隣に座るウズメを見てしまう。

すると、視線に気付いたのかウズメも灰治の方に顔を向ける。シャンパンガーネットのような桜色の瞳が細められ、華奢な手が灰治の頬に触れる。そして次の瞬間、二人の距離はゼロになった。
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