断片集


その言葉がなんだかやけに響いた。
つまらないとか、言うのは別に構わない。
それが事実だっていうならそれは受け止めているし、事実を聞くのには慣れている。
取り乱したりしない。むしろ、「そっかー」と、あえて自虐的にネタにできてしまうくらいのことなのだ。事実は変えられないし仕方が無いので、それをどうこう言ったりはしない。
それになにせあの母さんだって厳しくて批評家だし。
でも。
「もう……関わらないで」
でないと、ぼくはおぞましくて醜いものを見せ付けるだけになってしまうよ。
その子の綺麗な目を曇らせるような話をしそうだ。
その期待を、きっと大いに裏切ると思った。
そのときが来るのが怖いんだ。
ぼくが、そう言うと、その子は、ぼくが泣き出すより先に怒り出してしまった。
これまでに無いくらい怒っている。
「は……?」
その子の目を見て、ぼくの、これまで自分のことだけでずきずきと痛んでいた、それでも押さえつけていた心に、別の痛みが加わってしまった。
「なにそれ、せっかく聞いてたのに、自分で知って欲しいっていったのに手のひらをかえすんだね! ひどい、気持ちを試していたんだね、実験だったの」
裏切られたという感じで、悲しそうに言う。
「ち、ちが…………!」
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