断片集
にかけたのは間違っていたというのか……そんな間違い認めないっ!」的な気分になるので、ついリダイヤルしたくなる。他人に迷惑をかけている場合じゃないのでしないけれど、携帯を携帯しない系の人間が通話に出るのはレアなのだ)
『ふうん。そういえばこの前電話したのに出なかったね』
「ああ。あれってひょっとしてお前だった? 着信がなんか定期的だし、長いし、いつもと番号違うし、すっごく怖くて、出られないけど気になってて。っていうか、もう電話自体を止めたいくらいにかかってくるのが、こわい。本当はどこにも個人情報を載せたくないくらいこわい。だから、もう全部やめた方がいいかなって思っている」
『全部って、連絡を取り合うこととか、こうして《語る》ことを?』
「そうだよ。もしかしたらこわい人ばかりなのかなって、思って。昔もそういう裏切りじゃないけど。あったからさ。あのひとに見つかって今も電話が来るんじゃないかって思って思うと……もう、ストーカーとかは怖いよ。なんでそもそもぼくがお姉さんに付き纏われてたんだろ?」
警察は何か起こってからじゃなきゃ動けないから、自分で早めに手を打たないとならない。なので、ぼくは焦っていた時期があった。
でも、全部違ったみたいで、本当によかったと思う。やっぱりもう悪夢は現れない。
うん。ようやく解約できそうだ。
他の連絡は、伝書鳩でいいや。
『ああ、ごみん。お父さんのを借りていたんだけど、言ってなかったね。あのひとはもう居ないから大丈夫だって』
「でも……何回も来るけどどこを調べてもそれらしいのが載っていないしさ、携帯壊してて誰の番号もちょうどわかんなかったし、とにかく不気味だったんだ。もし他の人が用があっただけで違っていたなら、拒否したら悪いから正体を突き止めないと不安だった。近頃なぜだか、急に変な人が家の前に居たりしたんだ。不安な毎日だったんだよね。でも、勘違いでよかった……あぁ、怖かった」