断片集
最終話
もしれない。だから何かに紛れ込ませる必要があったんですよ。例えば、カーテンや布地などの模様とか」
1階2階を回って、順にカーテンの柄を確認、模様を回想する。
1階につき12部屋あるのだが、カーテンの柄は葉、太陽、ハート、星、鳥、天使、というふうに各階ごとで繰り返されている。
4階、3階、1階、2階。
この船は3階までだ。
だからきっとここでいう4階は、地下のこと。
「4階って地下でしょう。カーテンなんか無いけど?」
黒いウエーブした髪をなびかせてエナが言う。そうだ、そんな名前だった。
パッチワークみたいなワンピースを着た、お姉さん。
「それは、たぶん、配管などの番号で代用しているんだと思います」
「なるほどね」
「3階は」
「3階は、旗が立っています」
下から始まっている理由は、上から見た際に、格子に見立てるためだろう。
見取り図を見ていた理由。
それは、転置暗号を再現するためだったらしい。
ここでは4階から1階までの経路を使ってそれをしている。
そして恐らく、黒いシャツの彼女はハート、トリ、など、目印のあった場所を、別の言葉、LOVEなどに置き換えてメモしていたようである。用心深い人だ。
例えば、紙で言うと4312の順で部屋を回って、経路図に縦線と横線を引いて格子を作り、鍵に書かれた順序にそって、文字を入れていくと暗号にするための並び方をした言葉が出来上がる。
ここでいう順序とは、4312の各部屋の回り方のことだ。この船の内装では、一部の床に、飾りのタイルが交互に散りばめられている。特に、部屋と部屋の間を繋ぐ、中間地点のタイルはそうなっており、各階に上がるときに、ちょうど真っ先に目に入る。