断片集
02.夜更かしすると、逆に朝まで起きてやろうって気分になるときのテンション
「はい、野菜―」
「うん」
「はい、肉―」
「うん」
「口の周りについてるぞ」
「自分で取る」
「そうか?」
「わさび、からっ」
「ああ、お茶飲むか?」
「うん。あつっ」
「慌てて飲むから……」
「ぼくはいいから食べなよ……」
「いや、なんか、気になって」
「自分でやるって」
「なんか危なっかしいのじゃ」
「よく言われる……何も危なくないのに!」
「そういうところが、なんか、危なっかしい」
「はあ? なにそれっ!!」
「危険な石橋を、まあ割れたらそのときだよねって、渡ってる感じがする」
「まあそのときだよね」
「ほら」
「いいからー。ちゃんと自分の分を食べないと」
「わかったわかった。迷子になったら、係を呼ぶんだぞ?」
「ならないよ!」
「あと、美味しそうなものにもついていかない」
「行かないって! そんなに信用ないの!?」
「もふもふにも付いて行かない」
「なんで知ってるの!?」
「信じられます? 人間嫌いでも、例外があるようです」
ナツが、椅子に座ってこのやりとりをしているぼくとユキを見ながら、こそこそと、左側に居る古里さんに耳打ちしている。(右側はぼくです)
「みたいだね」
彼女も面白いものを見たという感じに笑っている。
ぼくは、ユキに次々渡される料理を、必死に受け取っては食べていた。
美味しい。
料理を紹介するのがめんどくさいので雑に言うと、お金持ちのクリスマス会に呼ばれた、って感じ。
サラダ、刺身、寿司、チキン、ケーキ、なんか、あらゆるごちそうと言われそうなものが粗方テーブルの皿に並んでいる。
「これ、誰のディナーショーなんですか?」
ナツが聞く。
古里さんは、ふふふと笑う。
怪しい。
「私のって言ったら?」
彼女が誇らしげに言う。
「へぇ」「そうっすか」「はぁ」
子どもたちのリアクションは、薄い。