断片集

「クッキーの市松模様を見て、おいしそうだなぁとか思わない?」
ぼくは言う。
「思う!」
その子は嬉しそうに頷く。
「お母さんも、きっと、お花を可愛いと思ったから、そのお花みたいに可愛いきみに着せたんだよ」
「そっかぁ」
女の子は、少し、安心したような、納得したような目をして、やがて、『じゃあね!』とぼくらから離れていった。
それから、ナツが疲れた顔で呟く。
「お前、どこ行ってたんだよ」
「飽きたんで、もぐらを叩いてた」
淡々と答えると、そいつはなんでやねん、みたいな顔をした。
ぼくはどうも、退屈になると一人で遊びに行ってしまうところがある。
(怒った? と聞かれることが多いけど、単に退屈になったから別の場所で遊んでるだけだから、心配しようが無駄でしかないので正直、そっとしておいて欲しい。気が向いたら勝手に戻るし)
いづれ戻って来るつもりだったんだけれど、探してくれたらしい。
こっちは放っておいて、遊びに行けばいいのに……
せっかく来たんだから、もっと遊びたいこととか、食べたいものとか、無いのか?
無いなら探すのも楽しいのに。
ぼくごときにわざわざ関わらずとも、もっと世界には楽しいことが溢れている。
考えてみて。ご飯とか、ご飯とか、あと、食事とか、ディナーとかさ。
もっとあるだろ、そっちを楽しめよ、って思う。
こっちはいいから広い世界とか、テーブルとかに、目を向けて欲しい。
頭が付いてるエビフライってかっこいいけど頭を食べないんだよね……でもかっこいい。



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