断片集
06
しばらく探検していたら、2階にテレビが点いている部屋を発見して、ぼくらはそこに
入った。いろいろ番組があったけど、どれも途中からって感じでつまらない。
ナツとユキが何か番組を見て盛り上がりだしていた。
ぼくはぼんやりと、昔のことを思い出す。
「普通にしてよね!」
そう言って、クマは怒っていた。
「前から言いたかったけどさぁ。そもそも私たちは珍しがられるのが大嫌いなんだね。気を遣われると、ああそれほどに異常なんだなって、ずきずきして、うわあああってなるのです。だんだん、もやっていららるのですね! 今も結構怒ってるよ!!! いっそのことうるさあああいってなってきそうだよー」
××ちゃんは、戸惑ったようにこちらを見て、そして、ぼくを見た。
ぼくも頷く。
「そうだよー。ぼくたちは、普通に、普通のように、存在したいんだよ。それをさ、あまりそういう風に接せられたら、まるで価値観を、自分の全てを、そういう風に阻害されているように感じてしまうんだ。自分のおかしさを、自覚してしまう。わがままで、ごめんなさい。でも、なんだか、辛いんだよ。怖いんだ」
××ちゃんは、普通って言われてもな、と言うから、ぼくたちは、更にむっとした。
新人くらいしか引き受けないくらい、『此処』の担当になるのは難しい。
大体みんな、精神を病んでやめていく。
ぼくらは普通にしてって言ってるだけなのに、誰一人それが出来ないから。
だから自業自得だって思った。
簡単なことだ。
でも誰も出来ない。
だったら、何の価値がある? ぼくらの誰もが思った。
みんなの前で行われる自己紹介は、審査というか、通過儀礼。
ある冬の日。ぼくらはある一室で、××ちゃんの目をじっと見ていた。