断片集
そういえば聞いたことがあるな。そういうものに合わない人も居るのだとか。
そんなことを思いながら、ぼくは本のページを捲りながら、××ちゃんが買ってきた白い色のアイスを齧る。中のみかんが冷えて程よく、しゃりしゃりしている。
「ひきこもったの?」
真は、ずかずかと切り込んでいた。
××ちゃんは、うるせえよと笑った。
「そうするとだ。普通経験するはずの『挫折』、そして『成長』を、置き去りにしてしまって、乗り越え方も、自信の探し方もわからないままに大人に成り易いわけ」
「ふーん」
「些細なことで傷付くのも、反抗したくなるのも、結果的には、大体、乗り越えていない思春期の症状のようなものであるって、昔なんかで読んだけどさ。だとしたら、人間の成長過程のごく普通の一場面ってだけの話じゃないか?」
「大体のことが、そんなもんだよね。異常なんて、成長の一場面のことも多い」
「今、世間で子ども向けを大人が見たりするのを見ると、なんか、みんなどこかしらそうなのかもって、思ったりしたり」
「へぇー。でも、真は、ずーーーっと、成長も挫折も出来ずに止まっているよ?」
「そうだな。お前は、そうだなァ。良いことなのかは。俺は知らんがな」
「じゃあ、大人向け児童書っみたいな、そういう立ち位置の本を出したら、案外わりと共感を得られたりしてー的な」
「あははっ、なんか、牛肉スタミナ弁当と、豚肉ヘルシー弁当を両脇に抱えたみたいな話だな」