断片集
「しかもなんと、裏返して置いてあるのだし、アイドルの足元にあるせいで、確認もしづらい。だが、今日中に報告を済ませたい。そんな彼らは困ったはずだ」
後ろから声。なんか意味のわからないことを言いながら、ぼくのすぐ左側に肩を並べたのは、母さんだ。「だから、横から写真を撮った後に、拡大し、SDカードのデータを読み込ませた画像ソフトで光の角度、コントラストなんかを調整して加工、拡大して取り出した色データをいくらかピックアップして抽出、解析という手段から、色合いの幅――、RGBだかCMYKだかの色味傾向を割り出すことで、知ろうとしたってわけだよ。わかってみるとくだらないな。事前にタイルの飾りの色合いやマークの種類だけは、教えられ、頭に入れていたんだろう。だから端のほうだけでも見れば、図形がわかる。それで判断したかった」
この人、別に面白くするために撮影したわけじゃないでしょ!
男がうっすら笑いながら上を指す。天井にはいくつかカメラが付いていた。
「惜しいな、局もあるが、あれはな、身体が常に監視カメラの死角になる向きのルートだった。そしてマークの、色の《数値》が取引の値段になる。メモはその値段を外部に知られないで会計するためだったっちゅうわけなのさ。わかったかい探、偵、ちゃん?」
なんか、面倒な取引なんだなーと思ってしまう。
「…………」勝手に探偵にするんじゃない。あと、なんで親切なんだ? こいつ。
ぼくは、なんとなく思い出すことがあって、服のポケットを漁る。