冷徹社長は幼馴染の私にだけ甘い
「君たちは今休憩中なのかな?」
ひやっとした冷たい声が広報部のフロアを一気に氷漬けにした。
「ゆ、しゃ、社長……」
優は冷たい視線で周りを見渡し、一歩下がった位置に一樹が「あらら」というような苦笑いで頭を掻きながら立っていた。
「ずいぶん盛り上がってたみたいだが、休憩中ならいい。仕事とのメリハリはちゃんとつけるように。そういえば、SNSの反響が凄くいい。この調子で皆さん頑張ってください」
コツコツコツ、と革靴の音が遠のいていく。凛子はその背中を見つめながら熱いため息をついた。
(助けてくれたんだ……)
凛子には分かる。自分が周りからの質問攻めに困っていることを気付いた優は話が逸れるよう自分から社員に話しかけてくれたのだと。
優は冷たいように見えて、凄く優しい。
今日も好き。凛子は心の中で小さく呟いた。