冷徹社長は幼馴染の私にだけ甘い

 凛子はそわそわしながら仕事中、時計を何度も確認した。後少し、後少し。時計の長い針も短い針もピッタリ綺麗に重なる。その瞬間に凛子は勢いよく立ち上がり、誰にも追跡されぬよう忍者のごとくデスクから姿を消した。


 廊下は走っちゃいけません、とかよく言うんだっけ。今なら廊下を走りたい学生の気持ちが少し分かる気がする。


 早く、早く会いたい。


 凛子はお弁当が入った鞄を大事に胸元で抱えながら速歩きで社長室までの道のりを急いだ。

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