冷徹社長は幼馴染の私にだけ甘い

「凛子」


 いつもより声が少し低く、優が怒っていることが凛子には手にとるように分かる。


「優ちゃん、怒ってる?」


 優はそっと凛子から身体を離し、両手を凛子の肩に乗せた。


「怒ってはいない。でも、何があったんだ? 凛子が泣いてたなんて、何か嫌なことでもあったのか? 何かあったら話してくれって言ったよな?」


 心配そうに凛子の顔を見つめる優。その表情に凛子はチクリと針で刺されたように胸を痛めた。


 優が凛子を心配しているのは妹的な存在を心配する目だ。家族を心配するのと同じようなもの。自分の事を一人の女として熱い視線で見つめて欲しいのに、こうも優しい視線は時に残酷だ。

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