冷徹社長は幼馴染の私にだけ甘い
希の一連の話を聞き凛子は顔をこわばらせた。
昨日の優と同期の名の知らない男性とのやり取りを見ていた人が居たらしい。凛子と社長が仲の良い関係だと知り、その話が渋谷ファンクラブの人たちの耳に入り「渋谷社長はみんなのもの!」と、怒り狂っているとの話だ。どこの学生時代の話だよ、とツッコミたくなった。
「ま、まぁ噂話しだから気にすることはないと思うけど。てか凛子、社長と知り合いなの?」
「……うん。小さい頃からの幼馴染なんだ」
「なるほどね。だから仲が良いって事か。凛子のその感じからして社長にずっと片想いしてるってわけね」
ポンポンと慰めるように、希が凛子の背中を軽く叩いた。
「バレバレか……なのに優ちゃんは全く気がついてくれないんだから」
「どんまい」
「ふふ、希、ありがとう」
希はこれ以上詮索してくることはなかった。それが凛子にとってすごく居心地がよく、社会人になってこんなに気の合う友達ができるなんて思っても居なかった。
「あ、私トイレに行きたいから希先に行ってていいよ」
「ん、じゃあ先に行ってるからね」
凛子は一人で女子トイレに入る。個室に入り用を足し終わり個室を出ようとした瞬間、女性の話し声が聞こてきた。