冷徹社長は幼馴染の私にだけ甘い
「広報部のあの新人、社長とどんな関係なわけ。あんた知ってる?」
「全く。新人だからこの会社の暗黙ルールを知らないいんでしょ。後で教えてやらないとね」
「本当、ブスのくせに社長に近づいて。麗奈さんくらいの美人ならともかく、ってあの人も全く社長に相手にされてないからこっちとしても安心なのよね。二人とも社長からしたら圏外ってことか」
まるで学生時代にタイムスリップでもしたような陰口に遭遇してしまった。凛子は個室にいることがバレないよう息をひそめる。
(ま、まさかこんないい歳した大人になってもこんなことがあるなんて。女って何歳になっても怖い……)
いつもならこんな陰口屁でもないはずなのに、今日の凛子には身体に深く刻まれるかのように悪意のある言葉が突き刺さった。
圏外、他人に言われなくても自分が一番わかっている。それを見ず知らずの人に言われ悔しい気持ちで身体がパンクしそうだ。
悔しい、悔しい、悔しい。
ギリッと歯を食いしばり、凛子はそっと鞄についている防犯ブザーに触れた。
もし、ここでこの防犯ブザーを鳴らしたら、優は昨日のように凛子の前に現れるのだろうか。必死な顔して、妹をいじめたやつは許さないとでも言ってくれるのだろうか。