冷徹社長は幼馴染の私にだけ甘い

「凛子」


 強い重低音に導かれて凛子は恐る恐る優に近づく。


「しゃ、社長お呼びですか?」


 きゅっとお腹の前で凛子は手を握りしめる。


「どうして今まで黙ってた? 昨日のこと望月から聞いたぞ」
「昨日のこと……?」


 麗奈に聞いたということはトイレでの事件のことだろうか。今までなにがあっても優にだけはバレないように過ごしてきたのに。


「きっと凛子が可愛いからその女性社員はやっかみを言ってきたんだろうな。もしまたそういうことがあったら俺に言うんだよ。社内での風紀の乱れは社長の俺の責任でもあるんだから」


 優は凛子の元へ近づき、ポンッと頭を撫でた。


「うん。でも本当昨日のはたまたまで大丈夫だから……っ」


 ふと凛子の視界に入った山積みの書類。長方形のものや、正方形のものまで無造作に積み上げられている。ドラマとかでよく見たことのある、お見合い写真だ。

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