冷徹社長は幼馴染の私にだけ甘い
「ねぇ、優ちゃん。優ちゃんのタイプは黒髪の美人さんで清楚な人が好みなんでしょう? この写真の中にいい人はいた?」
凛子はお見合い写真が山積みになっているデスクの前に立つ。ペラっと一枚めくると綺麗な着物に身を包んだ品のある女性が写っていた。
「この人なんて、綺麗だね」
「さぁ、どうかな。見てないからわからない」
「見てみなよ。優ちゃんのタイプの人がいるかもしれないよ」
――いやだ。いないで欲しい。
声が震えそうになるを凛子は必死で奥歯を食いしばって耐えた。今、優の方に振り返ったら溜まった涙がこぼれ落ちてしまいそうだ。
「ねぇ、優ちゃん。そのまま私の話聞いてくれる?」
コツンと革靴が動いた音がした。
「優ちゃん、そのままで聞いて」
ピタリと音が止む。
「あ、あぁ。話ってなんだ?」
凛子は意を決し、深く息を吸い込んだ。