冷徹社長は幼馴染の私にだけ甘い
「凛子は広報部に配属になったんだよな? もし、なにか困ったことがあったらすぐに俺に言うんだよ。必ず助けてあげるから」
「優ちゃん……」
凛子は唇をきゅっと噛む。お兄ちゃんのような言葉に嬉しさと悔しさが入り交じる。キュンとする大人の余裕を感じる言葉だが、やはり子供扱いされている気がして凛子は素直にありがとうが言えなかった。
「本当優は凛子ちゃんに対して過保護なんだよな〜」
ガチャット扉が開き、優の第一秘書、村上一樹(むらかみかずき)が社長室に入ってきた。茶髪の髪を短く切りそろえた一樹は見た目は優とは正反対の爽やか系。一樹も優同様、凛子の記憶ではモテているイメージしかなく、一樹は優の二個年下で高校時代の後輩だ。年齢差関係なく優と一樹はフラットな関係を築いている。
「あっ、一樹くんっ……じゃなくて、村上さん。お久し振りです」
「凛子ちゃん久しぶり〜! 普通に今まで通り一樹くんでいいから。それより、念願の就職おめでとう。念願の大人の女に一歩近づいたな!」
一樹は凛子に向かってパチンとウインクをした。一樹は凛子が優のことを好きなことを知っている。むしろ凛子の気持ちを知らないのは鈍感な優、本人くらいだ。
麗奈は自分だけが蚊帳の外が面白くないのか、キッと鋭い眼光で凛子を人睨みしてからふらっと社長室を出ていった。
「一樹、お前はもういいから仕事に戻れ」
優は一樹に冷たく言い放つ。こういうところが他人には冷徹に見えてしまう所なのだろう。言われた一樹は何も気にせず「はいよ〜」と明るく軽い返事で社長室を出ていった。