あの日、再び

希望のクラスメート

 クラスにつくと、いつもよりというか…とてもざわざわしている。こんなざわざわした中にいると、私まで落ち着かなくなりそうになる。イケメンといっても、男子とは仲よくしようとは思わないし。どうでもいいのに。落ち着け私。男子なんて…。
「りり、今日ははやいね!!今日のイケメンが来るからなの?もしかして、気のせい?席替え、とっても楽しみだね。近くになれるといいね!!」
「いつもと同じだから。気のせい。だけど、席替えは楽しみ。」
「そっか。それは関係ないのね。イケメン興味なしだもんね!りり。」
今、話しているのは、北村玲。親友だ。私は一番後ろの席であることに対して、玲は一番前。遠いけど、今日の席替えで近くなれるといいな。
「りりぃ、今日体育あるね…。しんどぉい!!というか、今日、数学の課題を忘れちゃったんだよね…。」
「玲、今日はわざとじゃないの?」
なぜこんなことを聞くのか。だって、玲が課題を忘れることって、だいたいわざとが多くて。中三だから、心配になる。わざとの時は教えてくれるけどね。
「わざとじゃないわよ~。わざとじゃない!!」
「本当に?」
「本当だってば!もう…。」
「顔にウソって書いてあるけど、玲?わざとじゃないの?」
「見透かされてるのか…。まぁいいわ。…わざとです。だ…だって、帰ってからすぐに塾があって、やる暇なんてなかったの。」
やっぱり。このくらい聞かないと、玲は教えてくれないの。なんでだろう。聞いていくうちに、まるで聞き込みをしているみたい…だとは思うけど、そんな風に思いたくない。突然やめても…変だよね。それより、わざとじゃない!!ととっても頑張って主張する玲の顔が面白い。だって…真っ赤だから。たぶん、恥ずかしいんだよね。玲って、とっても恥ずかしがり屋だから。意外にもね。たしかに、塾って、大変だよね。私、塾嫌いだし…。眠くなっちゃうんだよね…。だけど、玲は課題もできない…ということは、私よりも何倍も大変なんだろうな…。
「皆さん!席についてください。席替えをすぐに行います。そのあとに、このクラスに今日から入ってくる子を紹介します。ではさっそく行いますね。じゃぁ、ここの列から。長井さん、森橋さん、松岡さん…。」
 席替えを終えてみると、なんとまた一番後ろ!!その前には、玲がいる。こんなに幸せを感じることはめったにない。うれしすぎる!!
「りり、座席、前後だね!!とってもうれしい!!」
「玲、私も本当にうれしいよ!!」
「そういえば、りりのとなり、空いてない?」
「となり?空いてないでしょ~。」
「空いているから。見て。」
本当に空いているとは思っていなかったから、とても驚く。新しい子がとなりに来るなんて!!って、イケメンは興味ない…し。でも、となりだからということもあると思うけど、よけいに緊張してくる。新しい子って、優里じゃないよね?!毎回そうやって期待しても違うこと、わかっているのに。なんで今回こそ!!って期待してしまうのだろう…。知らない子しか入ってこないということは当たり前なのに。なぜか、いつもより期待しているような…。中学生で最後の学年になったからかな…?
「では、入ってきてください。拍手で迎えてください。どうぞ!!」
入ってきた子は、どこかで見覚えのあるような、なつかしい感覚で私をおそってくる。知らない子のはずなのに。どうして…?
「自己紹介をお願いします。」
「はい。椿中学校から春山中学校に来た、桐谷優里です。趣味は、サッカーとバドミントンですが、前の学校では、ハンドボール部に入っていました。よろしくお願いします。」
みんなが一気にざわつく。椿中学校といえば、とても遠くにあるけど、ハンドボール部でとても有名な学校だからだ。「見たことある!」という声も聞こえてくる。
「では、あちらの席へどうぞ。堀田さん、よろしくね。」
「あ…はい。」
そこにいたのは、なんと、ずっと会いたかった優里だった。信じられない現実にとまどってしまう。これは…現実じゃない。夢だと思っていても、ドキドキが止まらない。涙がでそうになる。現実ではないのを知っているけど、頬をつねってみた。痛い…。やっぱり、現実だった。
「久しぶり。」
と小声で言い、私の隣の席に座った。約束、覚えていてくれたのかな…?今の私はきっと、顔が赤くなっていると思う。顔…耳…いや、全身がとても熱い。なんでだろう。優里はあのころよりももっとかっこよくなっていた。私の横は本当に、優里?優里なの?!
「そうだよ。優里だよ。」
小声で言い返してきた。うそ。聞こえていたの?!とっても恥ずかしい。そこへ、先生がやってきた。
「堀田さん、桐谷君は堀田さんの家の近くに引っ越してきたらしいからね。」
その言葉だけを言って、戻っていく。どういうこと?!私の家の近く?!よく考えてみると、心当たりがある。もともと、優里が引っ越してからすぐに、佐々山さんという人が引っ越してきたのだ。佐々山さんは、とてもやさしいおばあさんで。だからいつも佐々山おばあちゃんと呼んでいた。けど、最近、引っ越してしまった。悲しかったけど、一週間前くらいに誰かが引っ越してきた。トラックの音がうるさくて。でも、いい人だといいなとは思った。ほかにも心当たりのようなものがある。それは、土曜日、塾から帰ってきたとき、お母さんがとてもうれしそうだった。挨拶に来ただけかなと思っていたけど…。知っていたのかな?たまたまうれしそうだったのかな?
 そんなことを考えているうちに、私の机の上に一枚の紙が置かれた。誰…?いたずら?でも、気になってしまう。紙を開けてみると、それは、優里からのものだということが分かった。
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