冷酷・楠木副社長は妻にだけは敵わない
冷たい副社長と穏やかな社長
そう━━━━━
朱李は、とても冷たい人間だ。

「兄貴、行くぞ」
スーツ姿の朱李が戻ってくる。

完全な仕事モードで、千鶴は惚れ直す。
「……/////」
(カッコいい////)

「待って、タクシー呼ぶ」
「は?さっきのタクシー、待たせとけよ!」

「待たせてる間も、料金は加算されるだろ?」

「そのくらいでケチケチすんな、ボケ!」
「はいはい…!ごめんね、朱李」
呆れたように言いながら、電話をかける。

「朱李くん…」
「━━━━━はっ!?ごめんね!ちづちゃんに言ったんじゃないよ?」
慌てたように千鶴の顔を覗き込んだ。

「朱李!
呼んだよ!すぐ来るって」
「ん。
ちづちゃんは、先に寝てな?
この分だと遅くなるだろうから」

「え……待ってるよ!」
「今既に11時過ぎてるし、きっと朝方になると思う。
だから、寝てな?
俺、16時頃に一杯しか飲んでないし、きっと酔いはさめるから実家に車取りにいって帰るな!」

「……うん…」
ポンポンと頭を撫でる朱李を見上げる、千鶴だった。


ガシャンとドアが閉まり、千鶴は肩を落とす。
「はぁ…行っちゃったな……」

“行け”と言ったのは自分なのに、とても寂しい。

「言わなきゃ良かったな……
………………
……って、ダメダメ!!
仕事なんだから!」

千鶴は頭を横に振り、ゆっくり風呂でも入ろうと思い風呂場へ向かった。


そして、一方の朱李と朱果━━━━━━

「兄貴」
「ん?」

「わざとだろ?」

「は?」
「“千鶴がいたから”頼みに来たんだろ?」

「あ…バレてた?」
「当たり前!
だって千鶴に言われなかったら、何があっても行かなかった」

「だよねー」
「兄貴、俺のこと冷たいとか酷いとかよく言うが、兄貴も大概ひでぇ奴だぞ」

「いや、朱李にだけは言われたくないよ………!」


事務所に着くと、警備員が出てきた。
「社長に副社長!
元旦から大変ですね……お疲れ様です」

「小田山さん、来てるよね?」
朱果の言葉に、警備員が頷いた。
「かなり、元気がなかったですよ」


会議室に向かい中に入ると、椅子に座っていた小田山がバッと立ち上がった。
「社長!副社長!
こんな日に申し訳ありません!」

KUSU家具━━━━━━
全国展開している、家具店。
朱果・朱李兄弟の会社の家具は、斬新な物から、おしゃれな物、客の要望に答えたオーダーメイドまで多種多様な家具が取り揃えていて、とても人気のある家具店だ。
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