冷酷・楠木副社長は妻にだけは敵わない

【朱李】

「━━━━━そっか!ちづちゃんも、新年会すんだ!
良かった!心配だったんだよ。
ちづちゃんを夜に一人にすること」
その日、仕事から帰ってきた朱李に報告した千鶴。

「うん!私も安心した!」
「………あ!!」
「ん?」

「あいつは、いないよな!?」
朱李が思い出したように、声を荒らげた。

「あいつ?」
「しゅう!!周太だよ!」

「いないよ。
ほら!私も去年結婚したから、みんな主婦でしょ?
だからね!
フレンチでも行こって話してるの~!」
「そっか!良かった……
あいつ、沙都のことベタ惚れのくせに、俺の千鶴にちょっかいかけるからなぁ…」

「え?そんなことないよ!
……………あーー!それよりも!」

「ん?」
「朱李くん!
キスマーク!!」

「は?」
「く、び!!
またつけたでしょ!?
見えるとこにはつけないでって、お願いしたのに!」

「あ……バレた?」
「………」
「ごめんって!
だってちづちゃん抱いてると、夢中になって余裕なくなるんだよ!」

頬を膨らまし、睨み付けている千鶴。
でも朱李からすれば、その仕草も可愛くてしかたがない。
でも、ここでからかうと更に怒らせることになる。

「ごめんな…!ごめん!」
朱李は、必死に謝る“ふり”をする。

「………」
「……ちづ、ちゃん…?
━━━━━っと…!!」
千鶴は、朱李に抱きついた。

「……き…」
「ん?」
「大好き…」

「うん…俺も!」


そして、朱李と千鶴それぞれの新年会の日━━━━━━

ホテルのパーティー会場を貸し切っての、KUSU家具・20XX年 新年会。
「━━━━━━ということで、皆さん。
今年も、更なる発展を願って……乾杯!!」

朱果の挨拶で始まった。

立食パーティーで、みんな各々食べたり飲んだりして楽しんでいる。

「社長!!副社長!
お疲れ様でーす!」

女性社員が、朱果・朱李兄弟の元に寄ってくる。
そして、あっという間に囲まれた。

兄弟の反応は、やっぱり正反対だ。

「お疲れ様!
いつもご苦労様!」
と、労う朱果。

「………」
無表情で、無視をして酒を飲む朱李。

社員達は、慣れていて特に気にしない。

「煙草吸ってくる」
その場を去ろうとすると……

「あ!そう言えば!
社長の義理の妹さん?
副社長の奥さんがやってるハンドメイドのサイト、今ハマってるんですよ~!」

ピタッと朱李の動きが止まる。
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