冷酷・楠木副社長は妻にだけは敵わない
それから遅い夕食をとる為、ルームサービスを頼もうとしている二人。

ソファに座り、朱李の足の間に千鶴は挟まれ後ろから抱き締められていた。

「ちづちゃん、どうする?」
「んー、色々食べたいな!」

「じゃあ…食べたいもんを、片っ端から頼むか!」



━━━━━━それから、料理が運ばれてきた。

「わぁー!凄い…
た、食べきれるかな?」

「まぁ、大丈夫だろ。
食べよ!
……………はい!ちづちゃん、あーん!」
朱李が、千鶴の口元にフォークで刺したローストビーフを持っていった。

「あーん…////
………………んんっ!美味しい…!」
「フフ…ちづちゃんも!」

「うん…
朱李くん、あーん!」
「あーん!!
……………旨っ!!」

「フフ…」
「フフ…」
微笑み合う。

「はい、ちづちゃん!」
「……//////
あーー………んんっ??」
千鶴の口元に持っていき、でも寸前でパクッと自分で食べた朱李。

「ん、旨っ!(笑)
…………ちづちゃん、可愛い!」
「なっ…/////
酷ーい!(笑)」

「フッ…ちづちゃんのあーん顔、可愛いんだよなぁ!」

「もう!!
いいもん!
朱李くんのお肉、食べてやる!!」
朱李の皿のローストビーフを取り、頬張った。

「じゃあ…ちづちゃんの海老食べちゃおうかな~?」
海老は、千鶴の好物だ。

「え……
い、いいよ?
どうぞ?」
皿を、朱李の方に寄せる。

朱李は、海老をフォークに刺して口に入れた。
そして口に含んだまま微笑み、千鶴を引き寄せた。

「え━━━━━んんっ!!?」
千鶴の口内に、海老が広がる。

「どう?海老」
「……/////」
朱李の言葉に、千鶴は顔を真っ赤にして何度も頷くのだった。


そして━━━━━━━

「朱李くん、これ受け取って!」
夕食が済み、二人はソファに並んで座っている。
千鶴は、朱李に小さな箱を二つ渡した。

「ありがと!」
「うん!
こっちがバレンタインで、こっちはお誕生日!」

「じゃあ…バレンタインから、開けようかな」
丁寧に開ける、朱李。

「あ……これ…」
朱李が驚愕し、千鶴を見た。
「うん…“初めて”渡した、チョコクッキーだよ!」

そう━━━━“あの”朱李の高一の時のバレンタイン。
千鶴に想いが通じた、あの日のチョコクッキーだ。

「あの、苦かった?(笑)」
「フフ…うん。
あ!でも、今回のは大丈夫だと思う!」

「じゃあ…いただきます!」
「………」

「美味しい…!!」

「やったーー!!」
両腕を上げ、喜ぶ千鶴。

「フフ…ほんと、美味しいよ!成長したな!」
ポンポンと頭を撫でる。

「うん!
…………って…あれから10年も経ってるし(笑)」
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