冷酷・楠木副社長は妻にだけは敵わない
琉太が帰り、送ってくれていた。

「ごめんね。中学生に送ってもらうなんて……」
「いえ!」

「………」
琉太を見上げた、千鶴。

なんとなく、朱李の高一の頃に似ていた。

(………って、私何を想像してんだろ…!)
頭を横に振る。


そしてふと、視線を横にそらす。
「え……」

朱李がいた。
隣には比々野がいて、二人並んで歩いている。

歩くのが早い朱李に、必死についていってる比々野。
その為か、比々野がつまづいた。

━━━━━━━━!!!!!?

それを、朱李が抱き留めた。


「あれ…って……朱李さんですよね……?
…………千鶴さん?
━━━━━━え!?なんで、泣いて……」

たった……これだけのことで、嫉妬心でいっぱいになる。

朱李は、冷たい人間。
抱き留めることも“普段は”しないのだ。

(あぁ…“特別”なんだ。
あの人は………)
おそらく“あの”カフェ・オ・レも、彼女からなのだろう。

聞かなくても、わかった気がした。

「琉太くん。
ここで、大丈夫だよ。
送ってくれて、ありがとう」
そこまで言うと、千鶴は駆けていってしまった。

「━━━━━━え!?千鶴さん!!」



一方の朱李。

「━━━━す、すみません!」
「お前、気ぃ付けろ」
「すみません!
…………/////」

「なんだよ」
「いえ////」
朱李の顔が近くにあり、比々野は思わず顔を赤くした。

そしてそのまま、朱李にしがみついた。

「は?」
「副社長…/////私……」


「離せ!!!」


「え……」
「お前、調子に乗ってるだろ!?」

「そんなこと……」

「俺は別に、お前を特別視してるわけじゃねぇんだからな!」
「え?」

「お前が不器用でも、必死に頑張ってるのがわかってたから、大目に見てただけ。
千鶴みたいで。
━━━━━━言っておく!
俺はお前に、何の感情も持ってない。
俺が情を持てるのは、昔から千鶴だけだ」

朱李は、おもいきり比々野の手を振り払った。

その拍子に、比々野が尻もちをついた。

「いいか。
もう……俺に触るな!
今まで通り、仕事“だけ”一生懸命しろ!
次、変な気を起こしたらクビだ!」

朱李は比々野を見下ろし、言い放ったのだった。
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