冷酷・楠木副社長は妻にだけは敵わない
弁当を出そうとする、千鶴。

「ちょっと待った!」
それを朱李が制した。

「ん?」
「まさか、これ…こいつ等と食べるの?」

「え?うん」
「あーだからか!
妙に、量が多いなと思ってたんだ。
ちづちゃん、そんな食べないのに」

「いいじゃん!
俺等は、酒と煙草買ってきたんだから!」
「は?
俺は、お前等に食わす為にせっせと弁当作ったんじゃねぇんだよ!?」

「え?これ、朱李が作ったの?」
「スゲー!!」

「そうなの。
こっちの崩れてたり、焦げてるのが私/////
見た目はこんなだけど、味は大丈夫だよ!」

「朱李くんって、器用なんだな!」
「そうなんです!凄いんですよ!」
間野の言葉に、千鶴が嬉しそうに答えた。

「千鶴が褒められてるわけじゃないのに(笑)」

「え?でも好きな人が褒められてたら、自分のことのように嬉しいよ?
そんなもんじゃないの?」
哲樹が笑いながら言うと、千鶴は目をパチパチして答えた。

それを聞いていた間野が、フッ…!と笑った。

「え?間野さん?」

「いや、北江(きたえ)くんの言ってた通りの人だなと思って!」
「え…」

「先週の飲み会で君の話が出てて、北江くん、かなり褒めてたんだ。
不器用でおっちょこちょいだけど、いつも真っ直ぐでとても純粋な人だって。
今、話を聞いててその通りだなと思ったから」

「あ、ありがとう…/////
うー////恥ずかしいよぉ////」
千鶴は、朱李の背中に隠れた。

「可愛い、ちづちゃん!」
後ろを振り向き、微笑む朱李。

哲樹と間野は、そんな千鶴を微笑ましく見るのだった。



それから朱李と千鶴の作った弁当と、哲樹と間野の買ってきた酒で談笑する四人。

次第に千鶴の口数が少なくなっていく。

「千鶴?」
「千鶴ちゃん?なんか、様子が……」

「ちづちゃん、眠い?」
「え?あ、少し…
お酒、久しぶりに飲んだから……」

「ほら、俺に身体預けな!」
「うん…少し…だ……け…」
朱李の肩に身体を預けると、そのまま眠ってしまった千鶴。

「寝た…」
「寝たね…」

「可愛い…」

「フッ…」
「あ?なんだよ!」
哲樹が噴き出し、朱李が怪訝そうに言う。

「“千鶴には”優しい顔すんだなぁーと思って」

「当たり前だろ!
千鶴は、俺の天使なんだから!」


朱李達は、しばらく千鶴を見つめていた。
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