冷酷・楠木副社長は妻にだけは敵わない
「ちづ、男心わかってねぇなぁ!」

「え?」
その話を周太も聞いていた。

「好きな女の、そんな可愛い格好…独り占めしたいって思うに決まってんだろ!?
だから“似合わない”って言い方をしたんだよ、朱李。
わかってやれよ!」

「周太さん…」

「だからって、朱李だって女心わかってないじゃん!」

「は?
女心以前に、ちづが“何のために”イベントに行くっつったかなんて、わかるわけねぇだろ!
朱李は、その券のこと知らないんだから!」

「そうだけど……」

「ちづは内緒にして、サプライズをしたかったんだろうが、それでこんな険悪になるくらいなら正直に言えばよかっただろ?
理由がわかれば、朱李だってここまで言わないはずだ!
あいつは、いつだって“ちづ”が一番なんだから!」

「そう…だよ…ね…」
千鶴が落ち込んだように、肩を落とし項垂れた。


「━━━━━で?どうすんの?
行くの?行かねぇの?」
「ちづ」

「フィギュア、プレゼントしたい!」

「わかった。
俺が、朱李を会場に連れてきてやる。
だから、絶対!特別賞を手に入れろよ!」
千鶴の頭をポンポンと撫でた、周太。
微笑み、力強く見つめていた。

沙都も魔女に着替え、ゆかり(ミニスカポリス)と合流し会場に向かった。

そして、周太は━━━━━━

ピンポーン!!
朱李のマンションの呼び鈴を鳴らす。

バン!!と勢いよく開き、朱李が出てきた。
「千鶴!!?」

「あー、周太!」
「は?しゅうかよ…」

「ちづは、会場。
“お前の為に”天使になって、特別賞を狙ってる」

「は?俺?」

「そう!お前の為!!
ちづはいつも、お前の為にしか動かない。
それは、お前だってわかってるだろ?」

「………あぁ、そうだな」

「◯◯のフィギュア」

「え?」

「ちづ、ずーっと壊したこと後悔してた」

「嘘だろ…そんなの、もういいのに……」

「お前が、徹夜してまでゲットしたフィギュアを故意ではないにしろ不注意で壊してしまったって。
俺のダチのとこまで行って、何処かに売ってないかって頼みにきたんだぞ?」

「千鶴が…?」

「あぁ…知ってると思うが、俺のダチの中にはヤクザもいる。
なのに、どうにかして探してもらえないかってな」
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