冷酷・楠木副社長は妻にだけは敵わない
豪華な夕食をゆっくり食べ、酒も飲む。

心地よい時間が流れていく━━━━━━━


また露天風呂に入り、大きなベッドに横になった。

朱李の腕枕で、頭を撫でられる。
千鶴が一番好きな時間だ。

「ねぇ、朱李くん」
「ん?」

「朱李くんは、いつから私を意識してくれたの?」

「んー、よくわからないんだよなぁー
いつの間にかって感じだし」

「そっか!」

「でも最初の段階から、目で追ってたかも?
兄貴に紹介された時は、正直めんどくせぇ女って思った。
でもさ!
無意識に、いつもちづちゃんを探してた。
兄貴と一緒にいるとこを見るのが、嫌で堪らなかった。
兄貴に向けられた、笑顔や優しい言葉、柔らかい仕草、見つめる視線……全部が、羨ましかった。
俺さ、兄貴にたいして“羨ましい”なんて思ったことなかったんだ。
何でも、たいして努力しなくても出来たし。
何でも、思い通りになると思ってた。
いや、俺なら思い通りにできるって自信があった。
なのに、ちづちゃんだけは思い通りにいかなくて……
兄貴から、奪いたいって思った」

「そっか!」

「ちづちゃんだけだよ。
思い通りにならないのも、欲しいと思ったのも、笑顔を教えてくれたのも、本気で好きになったのも……全部!!
今の俺は、千鶴で成り立ってる」

「うん!
私の方こそ、ありがとう!
私を好きになってくれて。
いつも守ってくれて」

「これからも、よろしくな!俺の不器用で可愛い奥さん!」

「こちらこそ!私の冷たい……でも、優しくてカッコいい旦那さん!」


それからも、ゆっくり千鶴の頭を撫でている朱李。
千鶴の目がとろんとしている。

「寝る?ちづちゃん」
「ん…でも、まだお話したい…」

「目、瞑りそうだよ?」

「んー、頭を撫でるのやめて?」

「フフ…」

「━━━━━━朱李くん……愛し合いたい……」

「え?」
「だって、いっぱい愛し合うんでしょ?」
ムクッと起き上がった千鶴は、朱李に跨がり組み敷いた。
そしてゆっくり、顔を近づけ口唇を重ねた。

チュッとリップ音がして、離れる。

「フフ…
なんか、変な感じ!
私が、朱李くんを襲ってるみたい!」

「俺、襲われてんの?(笑)」

「そ!襲われてるのー!」
朱李の手を掴み、指を絡めた千鶴。
そのまま布団に縫いつけ、朱李の頬や鎖骨にキスを落とした。

「ちづちゃん」
「ん……ん?」

「煽ってるの?」

「……/////
煽ってる…よ…////」

恥ずかしそうに視線をそらし、言った千鶴。

朱李は、フッ…と笑い身体を反転させた。


そして、千鶴を組み敷いた。
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