Liars or Lovers 〜嘘つき女と嘘つき男〜

6 信じてもいいですか?

 次の休日は、金曜日からの三連休だった。
 その初日の午後6時。私はあの駅に向かう。

 日の沈んだばかりの駅前。三連休初日、まだ帰らない人たちがごった返していた。

 笑う人たちとすれ違う私。
 一体、どんな顔をしているのだろう。

 やがて、私は彼の姿を見つけた。
 いつもの爽やかな笑みはそこに無い。
 代わりに、肩を落とし、背を丸め、じっと地面を見つめる彼がそこにいた。
 彼の周りにいる人も皆楽しそうな笑みを浮かべていて、まるで彼のいる一点だけ別の次元のようだった。

 私は自分から声をかける勇気が無くて、駅前の喧騒に紛れなから、しばらく彼を見ていた。

 日の沈んだばかりのまだ明るかった街が、だんだんと夜に支配され始める。
 彼は時折腕時計を見ては、また肩を落とす。

 スマホを弄ることもせず、ポケットに手をつっこんだままだった彼は、やがてしゃがみ込んで頭を抱えた。

 ごめん。
 来ておいてなんだけど。
 私には、君が分からないよ。

 今更声をかけるのも気が引けて、改札の方を向いた。

 帰ろう。
 そんな顔をしている君と向き合っても、
 忘れられる気はしないから。

 だから――


「美羽さん!」


 背中から、大きな声が私の名を呼んだ。
 バタバタと駆けてきた彼は、唇をもごもごとさせながら、私の前で立ち止まった。

「来てくれないと、思った」
「ごめん……」
「でも、来てくれた」

 彼は一瞬だけ笑って、それからまた顔を曇らせた。

「きちんとお話したいことがあります。一緒に、来てくれませんか?」
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