Liars or Lovers 〜嘘つき女と嘘つき男〜
一度息を吐き出して、思いっきり吸い込んだ。
「あのね、私30歳なの!」
「え……?」
溜め込んだ息が、はあ、と漏れた。
同時に、後悔が襲ってくる。
拓都さんが、黙ってしまったから。
「嘘ついて、ごめん。でもね、私、拓都さんが……」
またほろりと涙が溢れる。
自分勝手な涙が。
「……なーんだ、そんなことか」
「え?」
ははっと笑い声が聞こえて、涙が引っ込んだ。
「私、拓都さんより5歳も年上なんだよ?」
「ん、分かった。でもね、そんなのどうでもいい」
「30歳だよ。恋の賞味期限切れの女だよ?」
「でも、美羽さんは美羽さんでしょ?」
「へ?」
私は、私。
そんな拓都さんの気持ちが、私を優しく包んだ。
「確かに、マッチングしたのは同い年ってこともあったのかもしれない。でも、俺が今日一緒にいて楽しいって思ったのは、美羽さんだから」
じわんと、胸が温かくなる。
「嫌じゃない? 怒ってない? 嘘、ついたんだよ?」
「嫌じゃないし、怒ってない。そりゃ、騙されたな、とは少し思ったけど」
「ごめんなさい……」
慌てて謝ると、「いいって」と優しい言葉が返ってくる。
「結果、素敵な出会いができたんだから、そんなの別に気にしないよ俺は」
「拓都さん……」
「それに、今それを教えてくれたってことは……俺のこと、それなりに考えてくれてるってことでしょ?」
ジワジワと頬が熱を上げる。
目の前に彼がいなくて良かった。
「俺は、美羽さんのその気持ちが嬉しいから」
「拓都さん……」
優しく笑うその声に包まれて、胸がドキドキと高鳴る。
さっきまでとは違う、期待と希望のドキドキ。
それから、他愛のない会話をしながらも、胸がドキドキしてじんわりする。
言って、良かった。
ううん、それ以上に、
恋を始めて、良かった。
許された安堵と久しぶりのトキメキに、私の頬は勝手に緩んでいくのだった。