Liars or Lovers 〜嘘つき女と嘘つき男〜
 ◇  ◇  ◇

「美羽さん……」

 見上げると、拓都さんが私に覆いかぶさっていた。
 私はベッドの上にいて、その両手首をシーツに縫い留められている。
 いつの間に脱いでいたのか、彼の顕になった胸元にドキンドキンと脈拍が上がる。
 濡れた髪を掻き上げ滴り落ちた水滴が、私の気持ちをどうしようもなく高揚させた。

「拓都さん……」

 彼の名を呼ぶと、そのまま早急に口づけられた。

「んん……」

 身を捩ると唇が離された。
 けれどそれは一瞬で、息継ぎをする間もなくまた舌を絡め取られる。
 彼の素肌と触れ合った部分が、ジンジンと熱を帯びていく。

「美羽さん、俺……もう、限界」

 耳元でそう囁いた拓都さんは、そのまま耳にカプリと噛みつく。
 ピクンと身体を揺らすと、硬いものが腿の内側に触れた。

「ね? ほら、もう……」
「ああ……ん……」

 それが私の腿を撫でるように動いて、思わず嬌声が漏れた。
 いつの間にかそこに触れているのは彼の手に変わり、もっと敏感なところに迫ってくる。

「ねえ、もっと触っていい?」

 色っぽい声で囁かれ、コクコクと頷く。
 すると、彼の手がその先に――。


 ガバっ!

 と、起き上がった。
 もちろん、そこにあるのはいつもどおりの私の部屋で、私はいつもどおり自分のベッドの上にいた。

 私、なんて夢……。
 8年も恋をしてなかったとはいえ、これは無いでしょ。

 ため息をもらしながらも、枕の横に置かれたスマホを手に取る。

 1時間半の通話履歴。

 それから、[また、来週の日曜に][おやすみ]の文字。

 うん、これは夢じゃない。
 拓都さんからのメッセージを見返して、朝から幸せな気持ちに包まれる。

 1週間頑張れば、また拓都さんに会える。
 そうしたら、もしかしたらさっきの夢みたいなこと、あるかも?

 なんて、ちょっとした期待を胸に秘め、私は仕事に勤しんだ。
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