【6月7日書籍発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?
お昼のピークを過ぎて、ほんの少しだけ落ち着いた店内。ようやく私は、落ち着きを取り戻しつつあった。
「今日は、このあとお菓子作りと在庫確認でバックヤードに入るね」
「わかったわ」
ダリアのカチューシャには、うさ耳がついていた。同じような制服を着ても、どうして人によってこんなにも違うのかしら。
あまりに可愛らしいダリアのうさ耳のまぶしさに、私は思わず目を細める。
「さあ、確認しましょう」
私は、エプロンのりぼんをキュッと結び直して、バックヤードに入る。
昨日は、とても混んでいたから、お店に出すためのお菓子作りはしたけれど、在庫確認まではできなかった。
「今日中になくなってしまいそうだわ」
七色のさくらんぼが入ったソーダは、とても人気で、すぐにさくらんぼの在庫がなくなってしまう。
キラキラ輝く星屑の光も、瓶の中で飛び回っているけれど、あと数日でなくなってしまうだろう。
「さくらんぼは、帰りに魔女様の家に寄るとして、星屑の光は……」
ああ見えて、このお店を経営するオーナーは、お忙しいお方だ。
集める時間があるといいけれど……。
在庫確認が終わった私は、ほんの少しため息をつく。
「明日は、ビターなチョコレートのお菓子をお出ししようかしら」
いつでも騎士団長様が来てくれると思っていることと、すでに心待ちにしていることに、気がつかないまま、私はチョコレートを細かく刻み始めた。