【6月7日書籍発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?
なぜか、子どものように手を引かれて、用意されていた馬車に乗せられる。
「あの、乗合馬車で行こうと思っていたのですが」
「予想通りだな。……危険だとは思わないのか? 先日、屋敷に泊まった時にしても、君は無防備すぎる」
「うっ、それは言わない約束です」
基本的に早番でカフェフローラの開店から働く私の就寝時間は、とても早い。
しかも、最後に料理長が振る舞ってくれた飲み物には、リキュールが使われていたらしい。
「寝顔が、可愛らしかったな……」
「っ、!?」
真っ赤になった私を見つめて、照れるでもなくそんなことをつぶやいた騎士団様。
馬車の中で握られた手は、まるで子ども同士がつないでいるみたいだ。
「……か、からかわないで、ください」
「そう感じたか、すまない。だが、きちんと耐えた俺を褒めてほしいくらい、あの日のリティリア嬢は、可愛らしかった」
「…………!?!?!?」
あ、なんだか、馬車の中の温度暑くないですか?
え、騎士団長様まで、自分で言っておいて、照れるのはやめましょう?
馬車の中の温度は妙に暑くて、それなのに私たちの手は握られたまま、離れることはない。
「……レトリック領か、久しぶりに行くな」
「そうですね。私も三年ぶりです」