【6月7日書籍発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?
離れるときには、私くらいの背丈だった弟も、もうすぐ成人だ。
故郷に思いをはせる。
「…………ところで、君のことを王弟の私兵が嗅ぎ回っていた。レトリック領の復興に王家からの支援がなかった件だが、王弟が責任者だった」
「騎士団長様……」
「……なぜ、レトリック領と君が目をつけられたのか、心当たりはあるか?」
「はい……。魔鉱石という意味では、思い当たることがあります」
「魔鉱石か……。レトリック領が、主な産出地域だが、採掘方法は謎に包まれているらしいな」
「はい……。幼い頃から決して秘密を漏らさないように言われて育ちました」
「そうか……」
そこまで一息に言った騎士団長様は、ほんの少し逡巡するかのように黙り込んだ。
そして、長く息を吐き、私の目をまっすぐにのぞき込んだ。
「俺は、なんとしても、君を守り抜く」
伏せられた顔のまつげが、あまりにも長いから、思わす見惚れてしまいそう。
握られた手は、そのまま騎士団長様の口元へ、そっと寄せられて口づけられる。
「……リティリア嬢、俺にすべて話してくれるな?」
甘い口づけと動作とは裏腹に、騎士団長様の目は全く微笑んでいなくて、嘘なんてつけない圧力を発しているようだった。