【6月7日書籍発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?
こうなったら、全てを話すしかない。
騎士団長様は、私に巻き込まれる覚悟をしてくださった。
嘘をつくことも、なにも話さずに黙り込むことも、もうできない。
「……妖精が住んでいるんです」
「……そうか」
否定されなかったことに驚いて、騎士団長様の顔を見つめる。
先ほどとは打って変わって微笑んだ騎士団長様がうなずき、話の続きを促す。
「レトリック男爵寮の、魔鉱石採掘場所は、妖精の棲家になっていて、その場所に行けるのは、今現在私と弟だけなのです」
「そうか……。サンドイッチに挟んであった辛味のある花。妖精が好み蜜を取り出した花だけがあの味になるそうだな? リティリア嬢が手に入れたのだろうか」
「……私が好きなので、父と弟が送ってくれるんですよ。妖精が住む森でしか、手に入りませんから」
そのことを告げると、騎士団長様は、考え込むように手を口元へと持っていった。
そんな姿も絵になるな、と思いながら見つめていた私をいつのまにか、騎士団長様が見つめ返す。