【12月6日書籍2巻発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?
「その、瞳か」
「…………」
紫色の瞳は、珍しい。
妖精や精霊が好む色だと言われている。
騎士団長様の親指が、私の目元に触れる。
「騎士団長様……?」
「そうか。弟君も同じ色の瞳を?」
「……はい」
私と違って出来がいい弟は、魔法を使うことができるけれど。
この瞳をもって生まれただけなのに、なんの取り柄もない私は、あの森に入ることができる。
弟は、一人でしか入れないけれど、なぜか私の場合は、一緒に来た人も、受け入れてもらえる。
そのことを説明したら、騎士団長様は、ようやく厳しい表情から笑顔になった。
「そうか。このことを知っているのは?」
「父と、弟と、一部の採掘に関わる人たちだけです」
「なるほど、それなら王弟は、その瞳の色から察したのだな」
「…………一部の人間しか読めない資料に、記載されているのかもしれません」
急に、元婚約者のギリアム様が訪れたのも、そのことが関係するのかしら……。
「俺も騎士団長になってから、権限で読めるものは、すべて読んでいる」
「……と、いうことは、騎士団長様は、もうすでに知っておられたのですか?」
「騎士団長、だからな。国内外の情報には精通している。それでも、君の口から聞きたかった」
うつむいた私を、正面から騎士団長様が抱きしめた。
「君の力に、なれるだろうか?」
「力になれるもなにも、頼もしすぎます」
ただ、私がしてあげられることがあまりないから、それだけがチクリと痛かった。