【12月6日書籍2巻発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?
「――――まあ、俺は馬車の中で眠る。慣れているからな。リティリア嬢は、ゆっくりと休みなさい」
当たり前のようにそんなことを言う騎士団長様。
たしかに、ヴィランド伯爵家の馬車は、一般的な馬車よりも座り心地がいいけれど、私だけゆっくり宿に泊まるなんてできるはずもない。
「騎士団長様……」
すぐに私に背中を向けて、出口に向かってしまった騎士団長様の上衣の裾を掴む。
「リティリア嬢?」
騎士団長様の顔には、明らかに困惑が浮かんでいる。
でも、それでもやっぱり、一人で馬車で眠るなんてダメだと思う。
「――――そばで守ってくれるって、約束しました」
「……それは」
「宿で一人なんて心細いです」
嘘ではない。心細いのは事実だ。
「…………リティリア嬢」
「騎士団長様?」
「…………はぁ。たしかに、危険だな」
騎士団長様は、諦めたようにため息をつき、そのあと私の手を強く握って階段を上り始める。
私たちの部屋は、最上階の角部屋だった。
その部屋は、外観に負けないくらいとても素敵なお部屋だった。