【6月7日書籍発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?
***
こんな風にオーダーメイドのドレスを作ることが、こんなに大変だったとは……。
既製品のワンピースに着せ替えられた私は、ベッドに座って、クマのぬいぐるみを抱きしめた。
「――――騎士団長様、魔鉱石でよろしいですか?」
「なにがだ?」
「こんなにたくさん買っていただいても、私には何もお返しできません。魔鉱石くらいしか……」
おそらく、騎士団長様なら魔鉱石を有効に活用されるだろう。
今までのことにお礼ができるとしたら、それくらいしか思いつかない。
「…………リティリア嬢」
少し離れたソファーに足を組んで座っていた騎士団長様が、立ち上がり私の隣に座った。
そして、ポンッと私の頭に手を乗せる。
「まあ、深く考えず、愛しい人に贈り物がしたい気持ちを受け取ってもらいたいが、リティリア嬢には難しいかな?」
「子ども扱いです……」
淡いグリーンの瞳を細めて、騎士団長様が私がだいているクマのぬいぐるみの手を持つ。
「…………どう伝えれば伝わるのか、よくわからない」
「騎士団長様?」
「ずっと……、戦場ばかりにいたから」
クマのぬいぐるみの手をそっと揺らしていた騎士団長様。