【6月7日書籍発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?

 とても不器用な人だと思う。私も人のことは言えないけれど。
 私は、ズイッとクマのぬいぐるみを騎士団長様に押しつけた。

 一瞬、あっけにとられたようにクマのぬいぐるみを受け取った騎士団長様が、両の腕でクマを抱きしめる。

「簡単ですよ」
「…………リティリア嬢」

 一瞬だけ、騎士団長様の姿が、小さな子どもみたいに見えた。
 ごちゃごちゃ考えてみても、今の私ができることなんてたぶん一つしかない。

 たくさんの価値のある、高価な贈り物よりも本当にささやかだけれど、私はそれがほしいから、きっと騎士団長様も、同じ気持ちだと信じたい。

 立ち上がった私は、座ったままの騎士団長様と向き合う。
 何度伝えても、毎回一生分の勇気と鼓動を使い切ってしまいそう……。
< 118 / 334 >

この作品をシェア

pagetop