【6月7日書籍発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?

「受け取ってくれないのか?」
「…………ありがとうございます」

 ギュッと抱きしめたクマのぬいぐるみは、あいかわらず少しだけくったりとして肌触りがいい。

「騎士団長様……。どうして、このぬいぐるみ、くださったのですか?」
「――――え?」
「……だって、くじを引かないと手に入らないんですよ? たまたま、付き合いで引いたとおっしゃっていましたが」
「君が、このクマのキャラクターが、好きだと言っていたから」
「え?」

 たしかに私は、このクマが好きだ。もりのクマさんくじだって、一回くらいは引きたいと思っていた。
 でも、何回も引くほど贅沢はできないから、キーホルダーが手に入ったらいいな、くらいの気持ちだったのだ。

 以前、コーヒーを出すときに少しだけした騎士団長様との会話。

『おすすめのテーマはあるか?』
『三日後に森の動物たちがテーマでなんです。すごく可愛いんですよ?』
『そういうのが、好みなのか?』
『はい! もりのクマさんというキャラクターが好きなんです』
『そうか……』

 それは、騎士団長様に名前を初めて呼ばれた、前日の話だ。
 そのことを覚えていて、私にお土産でもとくじを引いたところ、特賞が当たってしまったというのが真相らしい。
< 121 / 334 >

この作品をシェア

pagetop