【6月7日書籍発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?
「受け取ってくれないのか?」
「…………ありがとうございます」
ギュッと抱きしめたクマのぬいぐるみは、あいかわらず少しだけくったりとして肌触りがいい。
「騎士団長様……。どうして、このぬいぐるみ、くださったのですか?」
「――――え?」
「……だって、くじを引かないと手に入らないんですよ? たまたま、付き合いで引いたとおっしゃっていましたが」
「君が、このクマのキャラクターが、好きだと言っていたから」
「え?」
たしかに私は、このクマが好きだ。もりのクマさんくじだって、一回くらいは引きたいと思っていた。
でも、何回も引くほど贅沢はできないから、キーホルダーが手に入ったらいいな、くらいの気持ちだったのだ。
以前、コーヒーを出すときに少しだけした騎士団長様との会話。
『おすすめのテーマはあるか?』
『三日後に森の動物たちがテーマでなんです。すごく可愛いんですよ?』
『そういうのが、好みなのか?』
『はい! もりのクマさんというキャラクターが好きなんです』
『そうか……』
それは、騎士団長様に名前を初めて呼ばれた、前日の話だ。
そのことを覚えていて、私にお土産でもとくじを引いたところ、特賞が当たってしまったというのが真相らしい。