【6月7日書籍発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?
「リティリア嬢もそう思うか? それなら、今日はアーサーと呼んでもらおうか」
「え!? 心の準備が」
「――――君と祭りを心から楽しみたい。……リティリア」
「…………!?」
結局、返事ができないままの私の手を軽く引いて歩き出してしまった騎士団長様。
「わぁ……!!」
昨日の景色とはまったく違う、色とりどりの色彩。
白い壁と赤い屋根が整然と並んで統一感があった街並みが、今日はたくさんの色であふれかえり、賑やかで楽しい雰囲気に様変わりしている。
「騎士団長様!! こんなに賑やかなお祭り、初めてです!!」
「…………リティリア」
「…………あの、騎士団長様?」
「アーサーだ。リティリア」
騎士団長様の長くて節くれ立った指先が、まるで悪いことをした唇をとがめるようにそっとなぞる。
地面に膝をつかなかった私を、誰か褒めてほしい。