【6月7日書籍発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?
揺られる馬車は、群を抜いて乗り心地がいい。
乗合馬車で帰ろうと思っていたのを思えば、車内で眠るのだって、余裕なくらい快適だ。
「騎士団長様」
「……ああ、なんだ。リティリア」
「っ……あの」
ただ、一文字、嬢という言葉がついていないだけで、なんていう破壊力なのだろう。
照れくさくなってしまい、思わずクマのぬいぐるみが、形を変えてしまうほど、強く抱きしめてしまった。
「……はぁ。ぬいぐるみに、なりたいな」
「え?」
まじまじとクマのぬいぐるみを見つめていた騎士団長様は、なぜかポツリとそんなことを口にした。
ぬいぐるみになりたいほど、お疲れなのだろうか。
「……聞かなかったことにしてくれ」
ふいっ、と顔を背けた騎士団長様の耳は、なぜか今日も赤い。
車内の温度は、それほど暑くないのに。