【6月7日書籍発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?
それはいけない。
そもそも、花冠は買うものではなく、作るものだし、里山は野営をする場所ではなく遊ぶ場所なのだから。
「行きましょう!!」
手を引いて、馬車を降りる。
御者さんには申し訳ないけれど、少しお留守番をお願いする。
「はやくはやく!!」
「そんなにはしゃぐと、転んでしまうぞ?」
「転ぶくらい、騎士団長様も走ってください!!」
「……そうか、では本気で走るとするか」
えっ、たぶん騎士団長様の本気の走りに、私がついて行けるはずがない。
そんなことを思った瞬間、地面から足がフワリと離れて、建てに抱き上げられていた。
「えっ、ちょっと!!」
「ここ数日、過酷な訓練というものから遠ざかっていて、少々体がなまってきた。付き合ってくれ」
楽しそうな騎士団長様の声。
あっという間に流れていく景色。
人一人抱えているなんて、とても思えないスピードで、騎士団長様は走り出す。
そして楽しい時間の始まりは、ある人との再会の序章でもあったのだった。