【12月6日書籍2巻発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?

「あれっ!? 子どもだったはずなのに、大人のお兄ちゃんになった!!」

 無邪気に驚く少女。
 時に関する魔法は、王国の重要機密だ。
 本来であれば、何らかの手を打たなくてはならないが……。

「君のその紫の秘密と妖精と仲がいいこと。家族に秘密だと言われているよね」
「あっ!! しまった」

 無邪気な彼女は知らないのだろう。
 紫色の瞳に関しても、王国の重要機密なのだと。

 だが、今現状で、小難しい専門用語で書かれたその資料を読んだことがある人間など、一握りに違いない。

「そう。それでは、俺は君の秘密を守ると約束するよ」
「ほ、本当?」

 上目遣いに見つめてくる少女の純真さに、ふとこのまま無事に大人になれるのだろうかと心配になる。
 人に対して全く興味を持てなかった俺にしては、とても珍しい。

 ……いや、恩人だからな。

 その考えは、半分しっくりときて、半分はモヤモヤする。
 だが、そんな気持ちを押し隠して、人のいい笑顔を浮かべる。

「その代わり、俺が子どもに変身できることも、誰にも言わないでくれるかな?」
「うん! お兄さんと私だけの秘密ね?」

 二人だけの秘密。

 それはどこか温かくて、むずがゆいような印象を俺の心に残したのだった。
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