【6月7日書籍発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?
逃避行と夢を集めたお店
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「リティリア・レトリック男爵令嬢、君との婚約を破棄する」
「ギリアム様?」
流行病で母を亡くし、レトリック男爵領に起こった数々の不幸な出来事。
魔鉱石を産出し、潤沢な資産を持ったレトリック男爵家は、危機に瀕していた。
「それは、いったい……」
「言葉通りだ。俺は、隣にいるピエーラ・ジュリアス男爵令嬢と婚約を結び直すことになった」
「そんな……」
ピエーラ・ジュリアス男爵令嬢と私、そしてギリアム・ウィアー子爵令息は、幼い頃からの友人だった。
ピエーラも、私とギリアム様の婚約を祝ってくれていたのに、まさか。
「それに、ピエーラのことを馬鹿にして嫌がらせをしていたそうじゃないか」
……そんな、そんなことしていない!!
叫ぼうとした言葉は、渇ききってしまった喉に阻まれて、声にならなかった。
不自然に打ち切られたという王家からの支援、契約とも言っていい婚約の一方的な破棄。
けれど、そのことに、反論するほどの力が、今のレトリック男爵家には残っていなかった。
その日、私は、恋はしていなくても、きっとお互いに助け合って生きていけると信じていた婚約者に、一方的に別れを告げられたのだった。