【12月6日書籍2巻発売コミカライズ決定】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?
「へえ……。やっぱりね」
魔女様は、そのカードの意味を説明してくれることもなく立ち上がり、棚の奥から山盛りの七色のさくらんぼをテーブルの上に置いた。
「次はないわ」
「感謝致します」
魔女様にお礼の言葉を継げた騎士団長様は、テーブルにのっていた籠を、片手で持って立ち上がる。
なぜか、私の手を強く握ったまま……。
「でも……。そうね、リティリアと一緒なら、騎士団長様だけは、ここに来るのを許可してもいいわ」
そんな魔女様の言葉の後。もう一度、先ほどのように空気が歪んだ感覚がして、気がつけば私たちは、先ほどの路地にいた。
仲がよい恋人のように、手をつないだまま。
ようやく離された手。……なぜなのか、少しさみしいと思ってしまった。
両手でクマのぬいぐるみを抱きしめると、くったりとなんともいえない安心感だった。
「魔女の家に、用事があったのか……」
「騎士団長様、巻き込んで申し訳ありませんでした」
「勝手に足を踏み入れて、迷惑をかけたのは俺の方だ。魔女は、約束を破ることを嫌う……。すまないな、最近王都で不審な事件が多いから、巡回をしていたんだが、魔法の気配を感じた先に君がいて……」
私は、顔を上げてまっすぐ騎士団長様を見つめる。
騎士団長様は、巻き込まれただけなのに、優先して私のことを守ろうとしてくれた。